Steps
横浜、象の鼻パークの風景として馴染み深いプロムナードは、1986年に廃線となった国鉄山下臨港線跡を再整備して作られたものである。もともと貨物輸送のために設計されたこの大きな構造体は、港町としてのスケールと歴史を感じさせるランドマークのひとつとなっている。遊歩道として整備された今も、動線としてプロムナード上にあがれる場所は限られており、個人の活動のスケール感とは大きなギャップがある。そのプロムナードに対し、主に工事現場などで使用される架設足場で作られた階段を対比させる。階段は、人間の肉体の寸法を持つ装置である。プロムナードに対し架設階段のスケールを比較、逆転させ、都市のスケールを再定義する。
この作品の制作は、長年横浜を拠点としながら全国で足場施工や販売レンタル、ソリューション提供を行ってきた株式会社スタックと行った。安全を大きなモットーにしてきた同社と共に、作品に登る人、その周囲の人、また作業員として働く人も安全にプロジェクトを遂行できるよう、細心の注意と確かな技術で作り上げられている。
構造物の上部は、万が一のトラブルを未然に防ぐため、一般には解放されない。公共空間における安全性とリスク、それに伴う制約と自由についての一つの葛藤の結果が可視化されている。
制作協力:abana、株式会社スタック
Atsuko Mochida
1989年東京生まれ。バウハウス大学大学院、東京藝術大学大学院先端芸術表現学科修了。公共空間や生活空間などに介入する建築的な規模のインスタレーション作品を制作。既視感さえある日常の空間にひずみを生みだし、その空間の意味合いを一時的にかえる、もしくは本来の意味合いを可視化することで、みるものの常識や感覚に働きかけ、変化させる作品を多く手がける。 過去には家、個人の部屋、公園、レストラン、学校の教室、廃ホテル、旧刑務所など様々な環境にサイトスペシフィック作品を制作。